Denmark Cooperative Learning Trip


〜単位共同社会を想像するスクールとトリップ〜

2021年 第3期は秋に実施予定です。

Presented by IFAS and City Lab Tokyo

 

2021年 第3期は秋に実施予定です。
以下は2020年の内容です。

 

デンマーク社会を学ぶためのオンラインスクール

このプログラムは、デンマーク研修旅行の計画を作成するプロセスを通して、デンマーク社会を学ぶオンラインスクールです。

毎回ゲスト講師をお招きし計6回の授業を通して知識を深めながら理論を経験に結びつけるための研修旅行を受講者が計画します。

研修旅行を企画することは、スクールで学んだ事柄はデンマークのどこで起きているのか、どんな環境の中で育まれているのかを能動的に学ぶ行為です。受講者どうしでマップを見つめながら、理論を空間に落とし込んでいきます。

こうしてスクールの中で作成されたプランに沿って、希望する受講者は実際に研修旅行を実施します(新型コロナウィルスの影響を踏まえて受講者どうしで日程も議論)。

このスクールは、様々なバックグラウンドから共通のキーワードに興味関心を持ち集まり対話できるコミュニティを形成することも重要な趣旨です。一過性のイベントとしての思い出で終わらせず、継続的に情報交換したり助け合ったりできる関係を作れたら幸いです。

単位共同社会とは

災害は常にトレンドを加速させてきました。新型コロナウィルスによる影響で世界中のこれまでの日常が失われ、それに伴い新たな日常が築かれています。新たな日常は、政治への信頼、労働環境における効率性、学びの柔軟性、コミュニティへの帰属意識、多様性の受容といった、持続可能な暮らしをかたちづくるうえで必要不可欠な要素を顕在化させ、社会に対し緊急にそれらの改善を要請しています。

近年デンマークは、建築デザインやまちづくり、ウェルビーイングや福祉制度、民主主義教育や生涯学習、参加型デザインやIT政策、サステナビリティや環境政策など、様々な側面で注目されています。こういった、日本社会の改善要請に答えるための重要な要素が、デンマークでは独自の文化の中で培われてきました。思想史、北欧社会研究者の小池直人氏は、その豊かな生活と健全な社会関係を生み出すデンマークの文化や社会を「サムフンズ(共同社会)モデル」と性格付け、デンマークの様々な文脈から共同社会モデルの輪郭を浮かび上がらせています。

当スクールは、デンマークに関わりの深い様々な分野の専門家をゲストに招き、体系的な学びと実践的な学びを往復しながら、共同社会モデルを想像するとともに、日本での共同社会の実装方法を模索します。私達の手で実装できる共同社会とは、一体どんな形をしていてどれくらい大きく、どんな活動がありどんな原理で組織されどう運営されるのでしょうか。現在使用されている「企業」や「大学」といった人為的な社会単位や、「町内会」や「親族」といった有機的な社会単位、そしてそれらを包括する概念として近年頻繁に使用される「コミュニティ」などの社会単位に依存せず思考するため、ここでは「単位共同社会」と仮称して、その姿を模索したいと思います。

また、「単位」という言葉は、中国では「工作単位(Work Unit)」の略称として、企業をはじめとするあらゆる職場の総称的な意味合いで使用された歴史があります。単位は、単なる職場ではなく、単位に所属するすべての家族の誕生から死までのあらゆる社会福祉サービスと経済を担っていた「社会」そのものでした。社会主義国家が生んだ単位制度は、単位の国家依存による柔軟性や自主性の喪失、そして個人の単位依存によるアイデンティティの喪失が問題となり、制度が作られてから約30年後の1980年には役割を終えたといいます。社会民主主義国家であるデンマークは、「ゆりかごから墓場まで」といわれるように国民の誕生から死までのあらゆる福祉を提供する社会主義的な枠組みが存在しながらも、国民の自主性、創造性を醸成する民主主義的な余白をデザインしているようです。当スクールを通して、社会としての大きな枠組みとその中で集い議論し型にはまらない発想を次々と実現させる人々の営みを学んでいきます。

皆さんと一緒に、日本がこれから作ることができる単位共同社会を想像し、明日から何ができるのか、何を変えるために誰と繋がり何をつくるのかなど、現実的な活動へと繋げられたら幸いです。

Cooperative Learning Trip(コーポラティブラーニングトリップ)とは

コーポラティブハウジングという、入居希望者複数人が協同組合をつくり、その組合が事業主となって自ら土地探しや建築家の選定、建築家との設計打ち合わせなどの建築プロセスを推進し共同住宅を建設する建築手法があります。建売の共同住宅に入居するのではなく、自分たちが暮らす空間ができるまでのすべての過程で組織の集合知としての要望を注ぎ込むことができるため、より満足度の高い暮らしを手に入れられることがメリットです。
コーポラティブラーニングトリップは、コーポラティブハウジングから着想を得ています。希望者が集まりコミュニティを形成し、共同で学び合いながら研修旅行を企画することで、スクールで得た知識がリニアに経験に結びつく実りある研修プランを作成することができます。ゲスト講師には授業レクチャーに加えて、研修旅行の企画議論にも加わっていただき、経験をもとにアドバイスをいただきます。

Detail

全体の流れ

  • ・5月3日9時半-11時...説明会(希望者のみ)
  • ・5月17日9時半-11時...説明会(希望者のみ)満員!
  • ・5月24日9時半-11時...説明会(希望者のみ)
  • ・5月26日...参加申し込み締め切り
  • ・5月31日9時半-12時...第1回スクール
  • ・6月14日9時半-12時...第2回スクール
  • ・6月28日9時半-12時...第3回スクール
  • ・7月12日13時-15時半...第4回スクール
  • ・7月26日9時半-12時...第5回スクール
  • ・8月9日9時半-12時...第6回スクール
  • ・9月以降...様子を見ながら研修旅行実施日決定

受講対象者

  • ・全6回中、4回以上参加できる方
  • and
  • ・まちづくりに関わる自治体や民間組織の職員
  • ・教育に関わる自治体や民間組織の職員
  • ・社会起業家/社会起業家を志す人
  • ・ソーシャルワーカー など

説明会

  • 先着10名で、簡単な説明会をオンラインで実施いたします。下記申し込みフォームからお申し込みください。(17日満員に付き24日も追加いたしました。)
  • ・日時①:5月3日09:30-11:00
  • ・日時②:5月17日09:30-11:00
  • ・日時③:5月24日09:30-11:00
  • ・申し込みフォーム:https://forms.gle/XMKBZgPZCgymdrP66
  • ・お問い合わせ:ty@ifas-japan.com
  • ・担当者:矢野拓洋
  • *説明会に出ていなくてもスクール受講への影響はございません。

研修旅行について

  • ・オンラインスクールは研修旅行を想定して進められますが、研修旅行への参加は強制ではありません。
  • ・視察先やルートなどは参加者が主体的に決めていきますが、現地へのアポ取りや宿泊先の提案などスタッフがサポートいたします。
  • ・研修旅行にかかる実費は、1週間で20万円ほどです。
  • ・昨年は、参加費などを追加で請求せず、参加者は自身にかかる実費のみを支払うというルールで研修旅行を実施しました。しかし、研修旅行を企画運営している他の企業、団体のサービスを妨害することにもつながるため、ルールの変更をいたします。
  • ・各研修旅行参加者は2万円を追加で支払い、その合計額の使いみち(旅費に当てる以外の使いみち)を研修旅行参加者間で議論し決定することといたします。

授業の進め方

  • 毎回の授業は、レクチャー、ディスカッション、研修先検討の3つを軸に構成されます。授業前半のレクチャーは、理論や哲学といったコンテクストと、事例紹介などのアウトカム、そしてそれらを踏まえて、今日本に必要とされている機能や足りていない役割、解決策となりうる空間(場)などについてお話します。質問やディスカッションをレクチャーの途中に挟みながら進めるように、少人数制のスクールとしています。参加者同士で疑問や意見を共有しながらレクチャーを受けることで、学びを深めていきます。
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  • 授業後半は、レクチャーやディスカッションで学んだ内容を実際に体験するためにはデンマークのどこを回ればよいのか、レクチャラーのアドバイスも受けながら地図や写真を見ながら議論します。理論が生かされている実際の空間やそこで活動する人々、周辺環境などを想像し議論することで、得た知識を多角的に把握でき、日本での応用に向けて柔軟性を高めることができます。

申し込み詳細

  • ・募集人数:10-20人
  • ・参加費:35,000円(全6回のオンラインスクール)
  • ・参加可能環境:ビデオ会議アプリZoomをダウンロードしてください(当オンラインスクールは無料版でご参加いただけます)。ご使用のパソコンのマイク、スピーカー、カメラの動作を予めご確認した上でご参加ください。Zoomの使用要件
  • ・予定はやむを得ず急遽変更される可能性がございます。
  • ・不参加回のフォローも計画しておりますが、参加者どうしの対話により学びの質を高めることを重視しているため、極力各回にご参加ください。
  • ・主催:一般社団法人IFAS 共催:シティラボ東京
  • Apply
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レクチャラー紹介

矢野 拓洋 Takumi Yano

Takumi Yano

一般社団法人IFAS共同代表/シティラボ東京スタッフ/東京都立大学都市政策科学域博士後期課程3年。当プログラムのオーガナイザー。2014-2017年デンマークの建築設計事務所と研究機関に勤務し、デンマークの建築/都市設計思想とデンマークの社会制度、文化の接点を学ぶ。民主主義的設計アプローチと教育システムに関心を強め、デンマーク民主主義教育のアイコンともいえるフォルケホイスコーレと関わりを深めるうちに一般社団法人IFASを仲間とともに設立。日本とデンマークを往復しながら、都市政策やまちづくり、ワークショップデザインの研究をしている。

坂口 緑 Midori Sakaguchi

Midori Sakaguchi

明治学院大学社会学部教授。専門は、生涯学習論、市民社会論。1988-1989年シルケボーホイスコーレ留学、2008-2009年オーフス大学客員研究員。デンマークのノンフォーマル教育機関やNPOについて調査している。主要論文に「承認をめぐる教育」『政治の発見つながる』(風行社、2010年)、「グローバル社会における生涯学習振興の課題」『社会教育』(2020年1月号20-24頁)ほか。雑誌『ソトコト』にコラム「ソーシャル系大学案内」を連載中。

佐藤 裕紀 Hiroki Sato

Hiroki Sato

新潟医療福祉大学健康科学部講師。専門は、比較国際教育学、生涯学習論、社会的包摂論。2012-2013年デンマーク政府奨学金を受けデンマーク教育大学にて客員研究員。社会的排除状況にある人々の支援と参加の在り方をデンマークの生涯学習社会を手掛かりに研究している。主要論文に「社会的マイノリティとの学び―北欧発祥の対話の実践を事例として―」(『日本生涯教育学会年報』第40号、43-58頁、2019年)、「デンマークの生涯学習における『従前学習認証』に関する研究:従前学習認証の展開の現状とノンフォーマル成人教育での実践」(『日本生涯教育学会論集』第36号199-216頁、2015年)ほか。日本ヒューマンライブラリー学会理事も務める。

安岡 美佳 Mika Yasuoka

MikaYasuoka

Roskilde University, Department of People and Technology准教授/北欧研究所代表/国際大学 GLOCOM 客員研究員/JETRO コンサルタント。専門はIT。北欧のデザイン手法(デザインシンキング、ユーザ調査、参加型デザインやデザインゲーム・リビングラボといった共創手法)を用い、ITやIoTなどの先端技術をベースに社会イノベーションを支援するプロジェクトを多数実施。著書に『リビングラボの手引き – 実践家の経験から紡ぎ出した「リビングラボを成功に導くコツ」』、『37.5歳のいま思う、生き方、働き方』など。

マーカス オクセルマン Markus Oxelman

Markus

カオスパイロット在学。デンマーク王立芸術アカデミーにて建築デザインを学んだ後、日本、ジョージア、スウェーデン、デンマークなど国際的にクリエイティブ業界で活動。2019年から、ビジネスウィーク誌で世界のデザインスクールベスト10、ファストカンパニー誌でStartup Leagues Big10に選出されるなど世界的に注目されるデザイン/ビジネススクールのカオスパイロットに入学。現在も日本とデンマークを中心にカオスパイロットの哲学を活かして活動し、またカオスパイロットに様々な価値を提供している。現在、Laere Copenhagen 共同代表を務めている。

Chrisitiania   

Curriculum

5月31日 9:30-12:00 矢野 拓洋(一般社団法人IFAS共同代表、シティラボ東京スタッフ)

レクチャー:「デンマーク社会への入り口」

多くの日本人が興味を抱くデンマークとはどんな国なのでしょうか。どんな文化を持つ人々がどんな社会を作り上げ、どのように暮らしているのでしょうか。初回のレクチャーでは、統計や制度を軸にしたマクロスケールと、写真や実体験を軸にしたミクロスケールを往復しながら、現在のデンマーク社会の輪郭に触れたいと思います。なるべく多角的に説明しますが、特にデンマークの幸福論と地域コミュニティの核としてのフォルケホイスコーレ、そして都市課題を解決するためにあらゆる企業や組織が小さな社会的プロジェクトを特定のエリアに集積させる総合都市再生事業を少し詳しく説明します。これらはデンマーク社会の表層でしかありませんが、次回以降の講義をより深く理解する上で大事な基本知識となります。

6月14日 9:30-12:00 坂口 緑(明治学院大学社会学部教授)

レクチャー:「デンマークの教育制度と共同社会の構成意識の醸成」

デンマーク社会の構成員である国民は、どんな教育を受けているのでしょうか。義務教育や大学、フリースクールなどあらゆる教育の根底には、どんな哲学が潜んでいるのでしょうか。第2回のレクチャーでは、教育という側面からデンマーク社会を見つめます。教育制度を俯瞰することで体系的にデンマークの教育を説明した上で、制度の裏付けとなっている思想や、思想の延長としてデンマークで見られる共同的な事象について紹介します。近年日本で急速に発展している官民連携といったセクター間共同や、ティール組織やホクラシー組織をはじめとする次世代型の組織論についてのヒントが、デンマーク教育を学ぶことで見えてきます。

6月28日 9:30-12:00 佐藤 裕紀 (新潟医療福祉大学健康科学部講師)

レクチャー:「民衆会議が映し出すセミラティス構造の社会」

デンマーク人は、どのようにして社会を維持し運営しているのでしょうか。国政選挙のたびに記録される80%以上の投票率や活発な市民活動はなぜ実現されているのでしょうか。そしてデンマークは、一人一人が社会を構成する一員として主体的に参加する共同社会をどのように構築しているのでしょうか。第3回のレクチャーでは、デンマークにおける共同社会を構築していくための試みについて学びます。デンマークで開催されている民衆会議に焦点を当てて、その概要と社会的な意義について説明した後、新型コロナウィルス対策における政府と国民のコミュニケーションといった事象なども紹介します。国や自治体、大人や子どもといったヒエラルキーを軽々と飛び越え、対話的で合意形成を重んじるセミラティス状の社会について学びます。

7月12日 13:00-15:30 安岡 美佳(ロスキレ大学准教授、北欧研究所代表)

レクチャー:「デンマークのIT政策とリビングラボの哲学」

デンマークの共同社会を、ITはどのようにサポートしているのでしょうか。また、共同社会はITを個人へ浸透させるためにどう機能しているのでしょうか。第4回のレクチャーは、参加型デザイン発祥の地である北欧のITに関する取り組みに焦点を当てます。新型コロナウィルスの影響を受けて格段にITの重要性が増していくなか、これまでデンマークの教育や労働、福祉といった現場でITがどのような役割を担っているのか、そして今後どのように発展していくことが期待されているのかを紹介します。また、ITをさまざまなライフステージにいる国民一人ひとりに浸透させるために実践されているリビングラボやアクティブラーニングの事例の紹介を通して、学びながら共同で発展させていく参加型のプロセスを理解します。(開始時間にご注意ください)

7月26日 9:30-12:00 Markus Oxelman (株式会社Laere CPH 共同代表、カオスパイロット在学)

レクチャー:「カオスパイロットというラーニングコミュニティ」

他者と共同で何かを生み出していくデンマークの伝統は、現代のクリエイティビティにどのような影響を与えているのでしょうか。新たな物やサービスが作られる空間は、どんな空間なのでしょうか。そこにはどんな人々が集い、日々どんな活動をしているのでしょうか。第5回のレクチャーでは、ハイブリッド・ビジネス・デザインスクールの「カオスパイロット」や、若手アーティストから生まれたスタートアップコミュニティ「Institute for (X)」の内部について詳しく紹介します。デンマークの第2都市オーフスで生まれたこの2つの活動を通して、学び合いが新たな価値を生み続けるデンマークのコミュニティ型ビジネスモデルを紹介します。

 

8月9日 9:30-12:00 矢野 拓洋(一般社団法人IFAS共同代表、シティラボ東京スタッフ)

レクチャー:「エコビレッジのガバナンスとローカルプランによる都市デザイン」

これまで学んできた様々な側面が1つの空間に落とし込まれるとき、それは一体どんな空間をしているのでしょうか。その空間の中で運営されている社会はどのような姿をしているのでしょうか。また、人々の暮らしを支える街は、どんなデザインプロセスを経てつくられているのでしょうか。最終回でのレクチャーは、空間に基づいて共同社会を想像します。デンマーク語でøkosamfund(エコ共同社会)と書くエコビレッジについて、基本的な概要や、実際の暮らしの様子、そしてエコビレッジを持続可能に保つためのガバナンスを紹介します。また、地域の課題についてきめ細やかに整理し空間的な改善をするローカルプランについての概要や、加算的な議論と柔軟な最適解の反映を可能にするデザインプロセスについて紹介します。これらの紹介を通して、唯一解の存在しない未来に対し絶えず議論し暫定的な結論を更新し続けることで人々の暮らしを進化させているデンマーク社会を学びます。